イソトレチノイン(イソトロイン®/アクネトレント®/アキュテイン®)内服治療

イソトレチノインアイキャッチ

「イソトレチノインってどのようなもので、どんな効果があるんだろう?」
「唇が乾燥するって聞いたし、リスク・副作用が心配」
「イソトレチノイン試してみたいけど、信頼できる病院がないかな」

こんにちは、美容皮膚科スマートスキンクリニックの医師です。

皆さんはこのような疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか?

この記事では、美容皮膚科クリニックが専門的立場から、分かりやすくこれらの疑問・お悩みが解決するよう解説致します

※料金が知りたいという方は、以下の目次から飛ぶことが可能です。

目次

イソトレチノインとは

イソトレチノインとは端的に言えば、ニキビの内服治療薬です。分類としては、ビタミンA誘導体と呼ばれる薬になります。

また「ニキビ治療の最終兵器」と呼ばれることもあるお薬です。

どのように効果を発揮するのかについて簡単に言えば、皮脂腺を萎縮させる作用を持っており、それによりニキビの治療効果が得られます。

イソトレチノインは成分名であり、商品名としてはアキュテイン、イソトロイン、ロアキュタン、トレティヴァと複数の薬があります。

日本では保険適用はまだされていませんが、海外においては長年使用されてきた薬になります。具体的には、欧米では35年ほど前から、アメリカでは1982年に承認されています。

中等度~重度のニキビに対してアメリカやヨーロッパの「ニキビ治療ガイドライン」では高いレベルでイソトレチノインの内服治療が推奨されています。イソトレチノインはリスク・副作用も存在しますので、医師の診察の元処方することが必須となっています。

実際の欧米の「ニキビ治療ガイドライン」の一部が以下になります。英語で分かりにくいかもしれませんが、「Severe(重症)」ニキビに対して、「High strength of recommendation(強く推奨する)」治療として「Isotretinoin(イソトレチノイン)」という記載があります。

欧米の「ニキビ治療ガイドライン」

(出所)Nast A et al:European evidence-based (S3) guideline for the treatment of acne – update 2016 – short version. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016, 30, 1261–1268

以下の当院のInstagramにて、視覚的にも解説していますので、文字を読むより視覚的に理解されたい方はこちらもご覧ください。

症例写真(Before/After)

症例①
症例②
症例③
症例④
症例⑤
症例⑥
症例⑦
施術名イソトレチノイン内服治療(20mg)
治療内容イソトレチノインの内服により、ニキビの改善、脂性肌の改善を目指す。1日1回1錠内服。
治療期間平均6ヶ月~9カ月。
料金10mg(30日分) 7,980円
20mg(30日分) 12,980円
※税込、自由診療
リスク・副作用催奇形性がある為、避妊が必須
皮膚の乾燥(特に唇)
肝機能の変化、脂質値の変動、関節痛と筋肉痛、頭痛、めまい、視覚障害、光過敏症、アレルギー反応、骨密度の変化

効果とその機序

効果

主な効果

  • ニキビの改善
  • ニキビを繰り返さなくて済むことが多い(長期的寛解)
  • 重症のニキビに対しても効果が期待できる

副次的効果

  • 脂性肌の改善
  • 毛穴が目立ちにくくなる場合がある
  • 毛穴の黒ずみができにくくなる
  • 肌ツヤが上がる場合がある

実際の診療経験として、保険診療の治療(内服、外用薬)を2~3年程続けていたが良くならなかった患者様が、イソトロイン内服し始めて3ヵ月程度で改善を認めた事例もございました。

効果の3つの機序

機序①:皮膚油分の減少

イソトレチノインは皮脂腺の機能を調節し、皮膚の油分分泌を減少させます。これにより、にきびの原因となる皮脂の過剰分泌を抑制し、炎症や毛穴の詰まりを軽減します。

またイソトレチノインは、皮脂腺における脂質合成酵素の活性を抑制します。具体的には、5α還元酵素の阻害や皮脂腺のサイズを減少させることによって、皮脂の分泌を減少させます。

皮脂の分泌が減ることで、副次的に毛穴が目立ちにくくなる場合があります。

機序②:炎症の抑制

イソトレチノインは、炎症性にきびの症状を改善する効果もあります。炎症を引き起こす因子に対して抗炎症作用を発揮し、赤みや腫れなどの症状を緩和します。

炎症反応に関与するさまざまなメカニズムを調節することで、炎症を抑制します。具体的には、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8など)の産生を減少させ、炎症反応を緩和します。また、T細胞の活性化や好中球の移動も抑制し、炎症を抑えます。

機序③:ターンオーバーの改善

イソトレチノインは、毛穴の詰まりを減少させる効果があります。これにより、粉瘤(ふんりゅう)や黒ずみといった毛穴関連の問題も改善します。

また、遺伝子発現を調節することで、表皮細胞の分化やアポトーシス(細胞死)を改善します。これにより、皮膚のターンオーバーが正常化され、毛穴の詰まりが軽減されます。

角化異常を改善する作用もあります。正常な角質形成を促進し、角質層の過剰な角化を抑制することで、毛穴の詰まりや炎症を軽減します。

ターンオーバーを改善しますので、副次的に肌ツヤが上がる場合があります。

積算量の考え方|内服期間はいつまでにすべきか?

イソトレチノイン治療を受ける際、多くの方が「どのくらいの期間飲めば良いの?」という疑問をお持ちではないでしょうか?

実は、この質問に対する答えは「積算量」という概念と深く関係しています。ここでは、積算量の考え方と、それに基づく内服期間の決定方法について、分かりやすくご説明いたします。

積算量とは?

積算量とは、体重1kgあたりの総投与量のことを指します。イソトレチノイン治療では、この積算量が重要な指標となります。

  • 目標積算量:120-150 mg/kg
  • 計算方法:(1日投与量 [mg/kg/日]) × (治療日数) = 積算量 [mg/kg]

なぜ積算量が重要なの?

積算量に基づいて治療を行うことで、以下のような利点があります:

  1. 長期的な症状改善
  2. 再発リスクの低減
  3. 個々の患者さんに合わせた最適な治療期間の設定

積算量に基づく内服期間の目安

体重や1日の投与量によって内服期間は変わりますが、一般的な目安をご紹介します:

性別 平均体重 1日投与量 推定内服期間 累積投与量
男性 67 kg 10 mg/日 約30ヶ月 約134 mg/kg
20 mg/日 約15ヶ月 約134 mg/kg
女性 53 kg 10 mg/日 約24ヶ月 約136 mg/kg
20 mg/日 約12ヶ月 約136 mg/kg

※ これはあくまで目安であり、実際の治療期間は個人差があります。

低用量と高用量の選択について:

  1. 低用量(10mg/日)の利点:
    • 副作用のリスクが低くなる可能性があります。
    • 皮膚の乾燥などの症状が軽度で済む可能性があります。
  2. 高用量(20mg/日)の利点:
    • 治療期間が短縮されるため、早期に効果が得られる可能性があります。
    • 長期的なコンプライアンス(内服を続けること)が向上する可能性があります。

積算量と治療効果の関係

イソトレチノインは、皮脂腺に対して以下のような作用を及ぼします:

  1. 皮脂腺の大きさと活性を減少
  2. 皮脂分泌の長期的な抑制
  3. 毛包上皮の異常角化の正常化
  4. 炎症性サイトカインの産生抑制

十分な積算量に達することで、これらの作用が持続的に働き、症状の改善と再発リスクの低減につながります。

個別化治療の重要性

積算量は重要な指標ですが、すべての方に画一的な治療を行うわけではありません。以下の要因を考慮して、個々の患者さんに最適な治療計画を立てます:

  • 症状の重症度
  • 体重
  • 副作用の有無や程度
  • 治療への反応性
  • 生活スタイル

例えば、国際的には0.5mg/kg-1.0mg/kgを15−20週内服する方法がスタンダードです。ただこちらはあくまで、世界で見た場合の基準ですので、日本人の特徴に合わせていく方が良いでしょう。

日本人においては、海外と比較し重症ニキビの方は少ないので、少なめの量で治療を開始しても良いと考えられます。日本人の場合、0.3mg/kg程度からスタートする場合も多いです。

積算量に関するまとめ

イソトレチノイン治療における積算量の考え方は、効果的かつ安全な治療を実現するための重要な指標です。

ただし、これはあくまでも目安であり、実際の治療では、定期的な診察を通じて、個々の患者さんの状態に合わせて細やかに調整していきます。

当院では、患者さん一人ひとりの状態を慎重に評価し、最適な治療計画を立てています。イソトレチノイン治療をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。

治療経過の一例

治療開始前:

施術名イソトレチノイン内服治療(20mg)
治療内容イソトレチノインの内服により、ニキビの改善、脂性肌の改善を目指す。1日1回1錠内服。
治療期間平均6ヶ月~9カ月。
料金10mg(30日分) 7,980円
20mg(30日分) 12,980円
※税込、自由診療
リスク・副作用催奇形性がある為、避妊が必須
皮膚の乾燥(特に唇)
肝機能の変化、脂質値の変動、関節痛と筋肉痛、頭痛、めまい、視覚障害、光過敏症、アレルギー反応、骨密度の変化



1ヶ月目:

皮膚、目、鼻、特に唇に副作用を経験する可能性があります。これはイソトレチノインの機序として皮脂腺を縮小し、皮膚の油分を減少させるため起こります。

また一部の患者様は、初めてイソトレチノインを使用すると一時的にニキビが悪化する場合があります。これは「初期フレア」または「パージング」(清掃)期間とも呼ばれ、薬が皮膚の深部にある不純物を排出する際に生じると言われています。

1カ月目

2ヶ月目:

ほとんどのケースでは、この時点でニキビの改善を認めることが多いです。一方で、皮膚の乾燥や他の副作用は続くか、場合によっては悪化するかもしれません。医師は通常、この段階で患者様の反応を評価し、必要に応じて投薬量を調整します。

2カ月後

3-4ヶ月目:

患者様の大半がこの時点で改善を示すことが多いです。ニキビの新たな発生はほとんどなくなり、既存のニキビも治癒します。副作用が生じる方もいますが、多くの患者様はそれらを管理する方法を学んでいたりします。(例:リップクリームを塗る等)

4ヵ月後

5-6ヶ月目:

大半の患者様が治療を完了します。皮膚は綺麗になり、新たなニキビの発生もほとんどありません。副作用は、薬物の使用を中止した後しばらく続くことがありますが、通常は時間とともに解消します。

※全ての患者様がこの通りの経過で改善を見せるわけではないことは留意してください。

辞めた後どうなるか?再発率は?

イソトレチノインを辞めた後の経過

終了後の最初の数週間:

治療を終了しても、皮膚の乾燥や他の副作用が続くことがあります。しかし、これらの副作用は徐々に軽減していきます。

終了後の数ヶ月:

多くの場合、ニキビは完全にクリアになり、新たなニキビの発生も抑制されます。皮膚の副作用はほぼ完全に解消されます。

終了後の6ヶ月以上:

 一部の患者では、治療の終了後に再びニキビが発生することがあります。これは通常、以前ほど重度ではなく、再度のイソトレチノインの治療または他の方法で制御可能なケースがほとんどです。

再発率

明確な再発率のデータはありませんが、ほとんど再発しないと言っても良いでしょう。一部の方で、再発がありますが、以前ほど重度にならないケースが大半です。

なぜ国内では未承認・保険適用外なのか?

アメリカなど諸外国では30年以上前から保険適用の内服薬でしたが、日本では保険適用外です。

理由としては、副作用とリスク管理の難しさが関与しています。

その一つの例として、出生前の影響が挙げられます。

イソトレチノインは使用中または使用後の短期間内に妊娠した場合、胎児に重大な奇形や発達障害を引き起こす可能性があります。そのため、使用する女性は厳格に妊娠防止を実施することが必要です。このような管理と監視は困難で、そのために一部の国では使用が承認されていないと考えられています。

ここで、イソトレチノインの使用に関しての国内の医師の意見も見ていきましょう。

論文の図表①

集簇性痤瘡とは

男性に好発し,顔面のみならず胸背部 に,多数の面皰と嚢腫・結節の多発をみる難治性 の痤瘡ないし膿皮症の一型のこと

論文の図表②
論文の図表③

(出所)林 伸和, 佐々木 優, 黒川 一郎等, 本邦での集簇性痤瘡,重症痤瘡患者の頻度および経口イソトレチノインに対する皮膚科医の意識調査, 日本臨床皮膚科医会雑誌. 2021 年 38 巻 4 号 p. 629-634

まとめると、難治性ニキビに対するイソトレチノイン治療の必要性を感じている医師が多いと言えそうですね。

治療ができない方

・妊娠中

・授乳中

・妊娠を考えている方

理由)先述の通り、使用中または使用後の短期間内に妊娠した場合、胎児に重大な奇形や発達障害を引き起こす可能性があるからです。

・小児
12歳以下であれば基本的に使用できません。13-17歳は状況を考慮の上、期間を定めた上での使用などを検討します。

何歳から内服可能なのか?

欧米のニキビ治療ガイドラインでは「12歳から内服可能」となっています。(逆に言えば12歳未満は内服禁止ということになります)

では、そもそも「なぜ年齢を気にする必要があるのか?」という点をご説明致します。それは「骨への影響」、別の言葉で言えば「身長の伸び(骨の成長)に影響を及ぼす可能性がある」からになります。

こちらは理論的には言及されることがありますが、臨床研究(医学論文)によると6ヵ月程度の短い期間でのイソトレチノイン内服では「大きな影響は出ない」と言及されています。

ニキビは「クレーター」「色素沈着」として長期的に残ってしまう危険性があります。当院は美容皮膚科ですので、クレーター・色素沈着に悩む方の診療も行っておりますが、特にクレーターは中々改善が難しい症状です。ですので、ニキビを早めにイソトレチノインで治してあげることは大きなメリットがあるかと思います。

リスク・副作用

重大な副作用

(1) 胎児の奇形、流産、死産、早産

(2)鬱、精神病(幻覚、幻聴)、自傷行為、自殺企図などの重大な精神疾患

起こりやすい副作用

(3)皮膚と粘膜の乾燥

イソトレチノインは皮脂腺を縮小し、皮膚と粘膜の油分を減少させます。これにより、口唇の乾燥、鼻の乾燥、眼の乾燥、皮膚の過度の乾燥などが引き起こされます。

鼻の粘膜が乾燥することで、「鼻血」を起こしやすくなる場合があります。

その他の副作用

(4)肝機能の変化

イソトレチノインは肝臓に負荷をかけ、一部の患者では肝機能の異常を引き起こす可能性があります。そのため、治療中は定期的に肝機能の検査が必要です。

(5)脂質値の変動

イソトレチノインは血中のコレステロールとトリグリセリドのレベルを上昇させる可能性があります。これは特に心血管疾患のリスクを持つ患者にとって重要です。

(6)関節痛と筋肉痛

一部の患者は関節痛や筋肉痛を経験します。これは通常、治療の中断または終了後に改善します。

(7) 頭痛、めまい、視覚障害

イソトレチノイン使用者の一部は、頭痛、めまい、または視覚障害を経験することが報告されています。特に視力の変化、夜間視力の低下などは、運転など日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

(8)光過敏症

イソトレチノイン使用者は日光に敏感になる可能性があります。そのため、日焼けを避けるための適切な予防策が必要です。

(9) アレルギー反応

イソトレチノインはまれにアレルギー反応を引き起こす可能性があります。これには皮膚発疹、じんましん、重度のかゆみ、息苦しさ、不規則な心拍、腫れ(特に顔や喉の腫れ)などの症状が含まれます。

(10)骨密度の変化

長期間高用量のイソトレチノインを使用すると、骨密度の変化や骨成長の停止が引き起こされる可能性があります。

注意事項

・服用期間中とその前後1ヶ月間に性行為をする場合は、必ず避妊を行ってください。

・服用期間中とその後1ヶ月間は妊娠、授乳、献血をしないでください。

※妊娠女性への輸血により、胎児にイソトレチノインの影響が生じるおそれがあります。

・イソトレチノインの治療期間中、治療後6ヶ月はピーリングやワックス脱毛はお控えください。

・治療中、侵襲の強いレーザー治療はできません。

・イソトレチノインを、他の人と共用しないでください。

・治療開始後に一時的にニキビが悪化する場合があります。

厚生労働省の注意喚起

イソトレチノインは、医師や薬剤師などの専門家による緊密な指導の下でのみ使用される必要がある。

妊娠又は妊娠している可能性がある場合、胎児に先天異常、流産、早産、死産を引き起こすおそれがある。

ひどい頭痛や、目のかすみ、めまい、吐き気、おう吐、脳卒中、下痢、筋力低下などのほか、 重大な精神症状

(うつ、自殺など)の副作用を生じることがある。

・専門家による診察を受けずに、決して購入すべきではありません。

・妊娠している、妊娠する予定である又は妊娠する可能性のある場合は、決して服用してはいけません。

・処方せんなしで販売するウエブサイトがあるが、これは違法であり危険である。

(出所)アキュテイン(ACCUTANE)(わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬)に関する注意喚起について(厚生労働省)

治療の流れ

STEP
Web予約

当院は完全予約制となっております。こちらからWeb予約の上、ご来院ください。

STEP
カウンセリング・医師診察

現在のお悩みや、過去にニキビ治療経験等をお伺いします。お肌の状態を確認し、イソトレチノイン治療の適応があり、治療をご希望される場合、リスク等をご説明の上同意書にサインをいただきます。その後、治療前の状態を記録する為写真撮影を実施致します。

STEP
血液検査(必要に応じて)

診察の上、必要な場合に実施致します。

STEP
処方

まずは、30日分を処方させていただきます。

STEP
再診

1カ月後を目途に、治療効果、副作用等を確認致します。

料金

イソトレチノイン 10mg(30日分)


7,980円(税込)


7,980円(税込)


イソトレチノイン 20mg(30日分)


12,980円(税込)


12,980円(税込)


自由診療であり保険適用ではありません。
診察の上、必要な場合に別途3,500円で血液検査を実施する場合がございます。

スマートスキンクリニックの特徴

「脂漏性皮膚炎」に対するイソトレチノインの有効性

ここで「脂漏性皮膚炎」という病気に対するイソトレチノインの有効性についてご紹介致します。

なぜ紹介するかと言うと、以下2つの理由があります。

  • 悩んでいる方が多いにも関わらず「根治させる治療法」が確立されていない。(2024年3月時点)(医学的に言えばエビデンスが確立していない)
  • イソトレチノインが脂漏性皮膚炎を完治させた事例がある。また、脂漏性皮膚炎に対してイソトレチノインの有効性を示した論文がいくつか出始めている。

➊脂漏性皮膚炎の現状|根治療法が確立されていない

それではまず「脂漏性皮膚炎とは何か?」「原因は何なのか?」「現在はどのような治療を行われているのか?」を解説し、その次に「イソトレチノインが脂漏性皮膚炎に対する良い選択肢と言える根拠」をお伝えしていきます。

最初に信頼できる医学サイトの脂漏性皮膚炎のまとめをご覧ください。

脂漏性皮膚炎は,皮脂腺の密度が高い部位(例,顔面,頭皮,胸骨)の皮膚に生じる一般的な炎症性疾患である。原因は不明であるが,皮膚に常在する酵母様真菌であるMalassezia属真菌が重要な役割を果たしている。脂漏性皮膚炎はHIV感染患者と特定の神経疾患を有する患者で頻度の増加がみられる。脂漏性皮膚炎では,ときにそう痒,フケ,ならびに頭皮,髪際部,および顔面の黄色調かつ脂ぎった鱗屑が生じる。診断は診察により行う。治療は抗真菌薬,コルチコステロイドの外用,タール,および角質溶解剤による。

脂漏性皮膚炎(MSDマニュアル プロフェッショナル版)

重要なポイントは2つあります。

  • 現時点で「原因が解明されていない」ということ。(医療関係者でない方は驚くかもしれないが、原因が分からない病気は多数存在している。例えば「片頭痛」という病気は明確な原因が判明していない。また「肝斑」なども同様である)
  • 治療の選択肢が多数存在していること。これは何を意味するかと言うと、原因が不明確なので「真因」に対して治療できていない可能性があるということである。少し考えていただくと分かるが、「これで確実に治る」という薬があれば、それが一つ存在していれば十分なのです。

つまりどういうことかと言うと、「根本原因が不明であり治療法が確立されていないため、様々な治療を試しているが改善せず悩みを抱えている方が多くいる」ということです。

「なぜ断言できるのか?」と思うかもしれませんが、それは私がその一人だったからです。

実は10年来フケの症状などで生活に支障を来していましたが、「ニキビ治療目的でイソトレチノインを内服したところ、想定外でしたが、脂漏性皮膚炎が治った」のです。

そこから論文を調べたりしたところ、面白い事実が分かってきました。次に「イソトレチノインが有効であった理由」と「医学的根拠」をご紹介していきます。

❷脂漏性皮膚炎にイソトレチノインが有効となる機序(仮説)

ここまで解説させていただいた通り、イソトレチノインの主となる作用は「皮脂腺を退縮させる=皮脂の分泌を減らす」という作用です。

脂漏性皮膚炎の原因は明確には解明されていませんが、以下のような機序が考えられています。

何らかの機序により、「マラセチア」と呼ばれるカビ菌が活性化され、この菌が生成する物質に対して肌が反応する。

カビ菌であるマラセチアは、医学的には「真菌」と呼ばれます。ですので、この真菌をやっつける薬が「抗真菌薬」と呼ばれます。ですので、脂漏性皮膚炎の治療法の一つに「抗真菌薬」という記載があるわけです。

ですが、「何らかの機序」によりマラセチアが活性化しているのだとすると、根本を解決できていないということが分かるかと思います。

実は脂漏性皮膚炎においては、「皮脂の分泌が増えている」とも言われいます。そしてマラセチアは「皮脂を栄養源としている」という話があります。

つまり、「根本原因は皮脂であり、それによってマラセチアが活性化している」という仮説が成り立ちます。このように考えると、「皮脂分泌を抑制するイソトレチノインが根本解決となっている」可能性があるわけです。

さて、ここまではあくまで美容皮膚科医である私の仮説になりますので、実際の論文をお示ししましょう。

一つ目の論文は2023年6月に「International Journal of Dermatology」という医学雑誌に掲載された論文になります。

2019年1月から2020年12月にかけて中等度から重度の脂漏性皮膚炎と診断され、経口イソトレチノインで治療された患者を評価した研究。

48名の中等度~重度の脂漏性皮膚炎患者にイソトレチノインが投与されたが、統計的に有意に症状の改善を認めたという結果が得られた為、以下のように結論付けている。

有効性と安全性を考慮すると、経口イソトレチノインは中等度から重度の脂漏性皮膚炎患者の治療に使用できる。

Zhang Yanfei, et al. Efficacy and safety of oral isotretinoin in the treatment of moderate to severe seborrheic dermatitis: a retrospective study. Int J Dermatol. 2023 Jun;62(6):759-763.

二つ目の論文は2017年1月に同様の医学雑誌に掲載された論文になります。

頭皮、顔面の中等度から重度の脂漏性皮膚炎の治療に対するイソトレチノインの有効性および安全性を明らかにするために行われた研究です。

この研究では45名が集められ、半分はイソトレチノイン投与、半分は外用薬による治療を受けました。

その結果イソトレチノインにより症状の軽快を認めた為、イソトレチノインは脂漏性皮膚炎の有効な治療法となり得ると結論付けています。

結論低用量経口イソトレチノインは、中等度から重度の脂漏症および脂漏性皮膚炎に対する治療手段となりうる。

Cristhine de Souza Leão Kamamoto. et al.Low-dose oral isotretinoin for moderate to severe seborrhea and seborrheic dermatitis: a randomized comparative trial. Int J Dermatol. 2017 Jan;56(1):80-85.

以上まとめますと、

  • 脂漏性皮膚炎は「根治しない」と言われることもありますが、私自身(N=1)の体験してはイソトレチノインでほぼ根治できた。
  • 医学論文において、イソトレチノインの脂漏性皮膚炎に対する「有効性」と「安全性」は一定レベルで検証されており、治療選択肢となり得ることが示唆されている。
  • 上記を踏まえると、現状の治療で改善を認めておらず悩みを抱え続けている脂漏性皮膚症の方は、一度イソトレチノイン内服という治療を試みることが有効であると言える。

もし脂漏性皮膚炎で持続的な悩みを抱えている方がいらっしゃれば、一度スマートスキンクリニックにご相談ください。

よくある質問

副作用が心配で、イソトレチノインを怖いと思っているのですが、大丈夫でしょうか?

色々と調べていると、副作用は心配になってしまいますよね。副作用はたくさん記載があるので、必ずどれか起きるのではないかと思ってしまうかもしれませんが、確率がゼロでないものは記載する必要があるので記載されているので、全てを不安に思う必要はないかと思います。

大切なことは、効果と副作用・リスクをしっかりと検討することです。効果とは、もしイソトレチノインを使うことでニキビが改善されるとすれば、それはあなたの生活の質に大きな影響を与える可能性があります。

イソトレチノインの副作用は様々ありますが、特に重大なもの催奇形性です。注意事項に記載したように、「服用期間中とその前後1ヶ月間に性行為をする場合は、必ず避妊を行ってください。」というリスク管理を徹底することで副作用・リスクは下げ得るものです。

また、定期的に医師の診察がありますので、副作用が出たら一緒に相談して対応していきましょう。

いつから効果が出る?

個人差がありますが、2カ月程度で効果を実感されるケースが多いです。

効果は内服終了後も持続する?

持続します。ですが、一部の皮脂腺は元の状態に戻ってしまうことがありますので、全ての方が再発を防げるわけではないことに注意してください。服用中止後に再発してしまう場合でも、内服前よりも症状は軽くなることは大半です。

ニキビが再発した場合はどうすれば良い?

基本的には再発時は、以前よりも軽度の場合がほとんどです。治療としては、トピカル(局所)療法(塗り薬)、または抗生物質内服など、イソトレチノイン治療を開始する前に用いていた治療法を実施することが多いです。

内服中に他の美容施術は受けて良い?脱毛とかも良いですか?

基本的に問題ありません。一方で、脱毛はイソトレチノインの服用中止後に行うことを推奨しています。最近の研究でイソトレチノイン服用中でもレーザー脱毛を受けても問題ないことがわかってきましたが、医療脱毛は出力が高く、リスクがあるためです。

飲み忘れた時はどうしたらいいですか?

当日中であれば、次の食後に内服してください。1日内服を忘れた場合はスキップし、翌日から1日1錠内服を再開してください。翌日に2錠内服しないようにご注意ください。

顔以外の背中ニキビなどにも効果はありますか?

あります。全身に作用します。

参考資料・文献

アキュテイン(ACCUTANE)(わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬)に関する注意喚起について(厚生労働省)

林 伸和, 佐々木 優, 黒川 一郎等, 本邦での集簇性痤瘡,重症痤瘡患者の頻度および経口イソトレチノインに対する皮膚科医の意識調査, 日本臨床皮膚科医会雑誌. 2021 年 38 巻 4 号 p. 629-634

Nast A et al:European evidence-based (S3) guideline for the treatment of acne – update 2016 – short version. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016, 30, 1261–1268

スマートスキンクリニック

スマートスキンクリニック

「美容医療をもっと身近に、スマートに。」がコンセプトのクリニック。

華美な内装をなくし内装費を削減したり、闇雲に機器を導入するのではなく、必要な機器を厳選し、機器にかかるコストも削減。

「多くの人にとって美容医療をもっと身近に」を目指しています。

クリニック受付

住所:東京都千代田区神田錦町3-16-1 EX神田錦町ビル 8階
診療科目:美容皮膚科(美容皮膚科・医療脱毛・医療痩身)

住所:東京都千代田区神田錦町3-16-1 EX神田錦町ビル 8階
診療科目:美容皮膚科(美容皮膚科・医療脱毛・医療痩身)

当サイトの医師監修について

当サイトの医師監修について


当サイトはスマートスキンクリニック監修医師の監修の元運営を行っております。

このページは、2018年6月に改正・施行された「医療広告ガイドライン」に基づき医療機関としてウェブサイトを運営し、また当院の監修医師による監修のもと制作しております。

このページは、2018年6月に改正・施行された「医療広告ガイドライン」に基づき医療機関としてウェブサイトを運営し、また当院の監修医師による監修のもと制作しております。

目次